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AI人材は採用より育成が現実解|社内の役割分担と3段階の育て方

AI人材 育成 社内人材 AI推進担当

Photo: Antoni Shkraba / Pexels

AI活用を進めたい企業の多くが、まず「AIに詳しい人を採る」という選択肢を検討します。しかし採用市場の競争は激しく、採れたとしても自社の業務を理解するまでに時間がかかります。この記事では、既存社員を育てる前提に立ち、社内で必要な3つの役割とそれぞれの育て方、兼務体制が破綻するラインを整理します。

採用が難しい理由は「給与」だけではない

AI人材の採用が難しい理由として真っ先に挙がるのは報酬水準ですが、実務上の障害はそれだけではありません。

一つは、応募者を評価できる人が社内にいないことです。機械学習の実務経験があると称する候補者のスキルを、AIに不慣れな面接官が見極めるのは困難です。結果として、経歴や資格といった外形的な情報に頼った採用になりがちです。

もう一つは、入社後の活躍条件が揃っていないことです。AIモデルを作れる人材を採っても、学習に使えるデータが整理されていない、業務プロセスが文書化されていない、といった状態では手の打ちようがありません。優秀な人ほど早期に見切りをつけて離職します。

加えて、いま企業が必要としているAI活用の多くは、独自モデルの開発ではなく既存のAIサービスを業務に組み込む作業です。ここで効くのは高度なアルゴリズム知識よりも、業務の勘所とツールの特性を両方わかっていることです。後者は、外から来た人よりも既存社員のほうが近い位置にいます。

社内に必要な3つの役割

AI活用を回すために必要な機能を、役割として3つに分けて考えます。1人が3役を兼ねる小規模な形から始めても構いませんが、役割として区別しておくと、誰に何を学ばせるかが明確になります。

役割主な仕事求められる資質
AI推進担当用途の選定、ベンダー評価、ルール整備、効果測定業務理解と社内調整力
現場の使い手日常業務でのAI利用、プロンプト作成、結果の検証自分の業務への習熟
データ整備役データの所在把握、形式統一、権限とセキュリティの管理地道な作業への耐性

AI推進担当

最も不足しがちなのがこの役割です。技術者である必要はありません。むしろ、業務課題を「これはAIで解ける/解けない」と切り分け、社内の反対意見に対応し、ベンダーの提案を鵜呑みにせず評価できる人が向いています。事業企画や業務改善の経験者が転じるケースが現実的です。

現場の使い手

各部署に1〜2名、AIツールを日常的に使い、周囲に教えられる人を置きます。全社員を一律に教育するより、まず各部署の推進役を育てて横展開するほうが、限られた工数では効率的です。

データ整備役

見落とされがちですが、AI活用の成否を左右します。社内文書がどこに何の形式で置かれているか、誰がアクセスできるか、更新は誰の責任か。これらが曖昧なままでは、社内データを使ったAI活用は進みません。情報システム部門や、業務マニュアルの管理経験がある人が担うことが多い役割です。

3段階で育てる

育成は、いきなり高度な内容から始めると挫折します。順序を分けます。

第1段階:自分の業務で使ってみる(数週間〜1、2か月)

生成AIを実際に触り、うまくいくこと・いかないことを体感する段階です。ここで重要なのは、研修で汎用的な使い方を学ぶことではなく、自分の担当業務の具体的なタスクを持ち込んで試すことです。「議事録の要約」「問い合わせ返信文の下書き」など、失敗しても業務が止まらないタスクから始めます。

第2段階:業務プロセスに組み込む(3〜6か月)

個人の工夫を、他の人も再現できる形に落とす段階です。使えるプロンプトを共有ドキュメント化する、どの業務でAIを使うか/使わないかの基準を決める、出力の確認手順を定める、といった作業が中心になります。この段階から、AI推進担当と現場の使い手の役割が分かれてきます。

第3段階:仕組みとして運用する(6か月以降)

利用ルール、情報の取り扱い基準、効果の測定方法を整え、属人性を減らす段階です。ここで初めて、データ整備役の仕事が本格化します。社内システムとの連携やAPI利用を検討するのもこの段階です。

多くの企業が第1段階のまま止まります。原因は、個人の便利ツールとして使われるだけで、業務プロセスの見直しに踏み込まないことです。第1段階から第2段階への移行には、現場の裁量だけでなく管理職の関与が必要になります。

社内勉強会と資格支援は、どこまで効くか

社内勉強会

効果が出やすいのは、「自分の業務でこう使った」という事例を持ち寄る形式です。外部講師による座学は入り口としては有効ですが、それだけでは行動が変わりにくい傾向があります。

運営上の注意点は次の通りです。

  • 参加を任意にすると、もともと関心のある人しか来ない。部署ごとに参加者を指名する
  • 成功事例だけでなく、うまくいかなかった試行も共有対象にする
  • 月1回程度の頻度を、少なくとも半年は継続する
  • 議事や事例は検索できる形で蓄積する

資格取得支援

AI関連の資格は、体系的な用語と全体像を得る手段としては有用です。特にAI推進担当がベンダーと対等に話すための基礎知識としては意味があります。

一方で、資格があれば業務でAIを使えるようになるわけではありません。資格支援を入れる場合は、取得を目的化せず、取得者に社内勉強会の講師役や推進担当を任せるなど、知識を使う場とセットで設計することをおすすめします。

兼務体制の限界ライン

多くの企業では、AI推進担当は既存業務との兼務でスタートします。これ自体は妥当な判断ですが、兼務のまま進められる範囲には限度があります。

目安として、次のような状態になったら専任化(または工数の明示的な確保)を検討する段階です。

  • 複数部署から同時に相談が来て、対応が滞り始めた
  • ベンダー選定や契約交渉が発生している
  • 利用ルールや情報管理の基準を全社に適用する必要が出てきた
  • 兼務者の本来業務の締切と、AI関連の作業が恒常的に衝突している

逆に、特定部署の中で数名が使っている段階であれば、兼務で十分に回ります。判断の分かれ目は「全社に影響する意思決定を求められているか」です。ここを越えた後も兼務のまま放置すると、担当者の負荷が上がるだけでなく、判断が先送りされて全体が停滞します。

なお、兼務を続ける場合でも、「週◯時間はAI推進業務に充てる」と時間を明示し、上長がそれを認識していることが最低条件です。善意の持ち出しで成り立っている体制は長続きしません。

よくある質問

Q: 育成対象は、若手とベテランのどちらを選ぶべきですか

A: 役割によります。現場の使い手は、業務への習熟度が高い人のほうが「どこにAIを使えば効くか」を判断できるため、必ずしも若手である必要はありません。一方、新しいツールへの抵抗が少ないことも重要なので、年齢よりも「自分の業務を変えることに前向きか」を基準に選ぶことをおすすめします。AI推進担当については、社内調整が発生するため、一定の社内人脈と発言力がある人が適しています。

Q: 外部研修を導入する場合、何を見て選べばよいですか

A: 自社の業務データや実際の課題を演習に持ち込めるかどうかが一つの判断基準になります。汎用的な事例だけを扱う研修は、受講直後の満足度は高くても業務への接続が起きにくい傾向があります。また、研修後に社内で誰が旗振りを続けるかを決めてから発注しないと、単発で終わります。

Q: 育成した人材が転職してしまうリスクはどう考えるべきですか

A: リスクはありますが、育成しないことのリスクと比べる必要があります。現実的な対策は、特定個人にノウハウを集中させず、プロンプトやルール、判断基準を文書として残す運用を最初から組み込むことです。これは離職対策であると同時に、第2段階から第3段階への移行そのものでもあります。

まとめ

AI人材は、外から採るより社内で育てるほうが現実的な選択肢になりつつあります。ポイントは3つです。

第一に、必要な役割を「AI推進担当」「現場の使い手」「データ整備役」に分け、それぞれ別の人材像として考えること。第二に、育成を「試す→業務に組み込む→仕組み化する」の3段階に分け、順序を飛ばさないこと。第三に、兼務でどこまで進められるかを見極め、全社的な意思決定が求められる段階に入ったら体制を見直すことです。

まずは自社が第1段階から第2段階のどこにいるかを確認し、次の段階に進むために足りていない役割は何かを特定するところから始めてみてください。

株式会社ALT 編集部

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